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○平成22年度 日本自治創造学会研究大会             ホテルJALシティ田町東京


1.概要

 設立第1回大会。テーマ:日本の再生・地方自治の創造〜地方からの挑戦〜

 プログラム
 第1日目 5月17日(月)

  会長講演“地域主権国家と地方自治の展望”   佐々木信夫 中央大学教授
  講演 “わが国の地域主権改革” 〜そのシナリオと課題〜 衆議院議員 逢坂誠二
  講演 “日本政治の課題と展望” 〜何が問われているか〜 東京大学教授 御厨 貴

 第2日目 5月18日(火)

  分科会
  第2分科会 政策立案と開かれた「議会づくり」
          コーディネーター:金井利之 東京大学教授
          事例発表
          ・三重県議会議長 三谷哲央
          ・全国市議会議長会法制参事、明治大学大学院講師 廣瀬和彦
  全体会:分科会統括
  パネルディスカッション“日本を変える、自治体を変える〜地方からの挑戦〜”
      パネリスト 政治ジャーナリスト・朝日新聞編集委員 星  浩
      パネリスト 前志木市長・地方自立政策研究所理事長 穂坂邦夫
      パネリスト 東京大学教授 金井利之
      パネリスト PHP総合研究所代表取締役 永久寿夫
      コーディネーター 中央大学教授 佐々木信夫       

以下、文責は内田俊英にあります。


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2.会長講演“地域主権国家と地方自治の展望”   佐々木信夫 中央大学教授

○昨年の政権交代。政権代わって政策能力なし。野党になって野党能力なし。
 これまで官僚依存だったことが明らかに。
○「公選職の人が政策を磨く場がない」…日本の大きな欠陥
○「エリート」の本来の意味は「選挙で選ばれる人」。対置するのは「マス」
○クリエイティブな人こそリーダーに。暗記力ではない、受験エリートの時代は終った。むしろ選挙で選ばれた
 その人々が「磨く場」としてのこの“学会”を設立した。
○国会議員、計722名。衆院480名、参院252名。これが中央政府の意思決定者。
 だが公務員へ丸投げ60年。これが日本の政治の姿だ。
 官僚より能力の高い人が集団をなしているのか?
 政治主導というが、その能力がないのではないか。
 市町村こそ第一の政府というべき。
 都道府県議員2800名。都道府県の意思決定者。
 市町村議員6万名が35000名に。市議22000、町村議13000。(区議1000。)
 以上合計39000名の政治エリート。
 首長1800名。合計して4万人足らず。この人々が150兆円を使う決定者である。
 GDP500兆円の約3分の1が公共領域ということだ。
 残り3分の2が民間分野。そこでは適者生存、つぶれるのは当り前、
 生まれ、消えるダイナミズムの世界。
○議会制民主主義vs首長民主主義 欧米では議会の代表が市長となるケースが多い。
 本来、議会が主役
○地方団体は事業官庁から政策官庁へ。「地方公共団体」から「地方政府」へ。
 職員を育てるのも議会の仕事だ。
 市民の声を直接反映させるのも首長でなく議員だ。
○オーストラリアでは投票に行かない人に罰金。義務を果たしていないから。
 国も地方も選挙権20歳である必要はないのではないか。
 15歳住民投票の国もある。それは未来への視点から。
 70歳の政党「立ち上がれ日本」など、「70歳以上は逃げ切り世代だ」。
 英国は首相も閣僚も40歳代。対して中国や日本は「老練な人がやる」。
○議会は今、「脇役」から「真ん中」へ。
○なんで市長が議会を招集するのか。そもそも議会とは?そのルールは?
 それを明らかにするのが議会基本条例だ。
○機関委任事務制度の下では、いわば首長は「大臣の部下」。自分は選ばれたのに、なんで
 言わされ仕事なのか? さらに議会はそこからさえはずされていた。
 昭和22年まで、市議会は市長の諮問機関だった。市長が議会を招集する制度はまだ続いている。
 中央集権下、2000年まではそれで不都合はなかった。国として、部下を抑える制度。議会を
 排除し、チェック機関に甘んじさせていた。大臣-知事-市長のラインで、議会を排除。
 市長に招集権があるのはその名残り。議員は「質問をすることが仕事」と思っていないか?
○「会派」とはなにか。「議長を選ぶ仲間集団」? 「政務調査費の受け皿」?
 いよいよ「政策集団」になるべきときだ。
○政権が交代しても終身制度の公務員は代わらない。アメリカでは政権代われば行政も代わる。
 公務員は市民のためでなくボスのために働くようになる。それではダメ。メリットシステムへ。
○行政不信の根幹は、公務員がチェックされてないことだ。
 クローズ名公務員制度をオープンにすべきだ。
○2000年までは「2割議会」。今は10割議会になっている。
 すべて議会が決定しない限り動かないシステムになっている。
○歴史を概括すると、
 @明治期 首長中心、議会は骨抜き
 A昭和22年から2000年3月まで 機関委任の時代
 B10割議会の時代 地方がローカルガバメントを行い、その政策、ルールに責任と負担を担う
  時代が始まった。
○国と地方の関係 二つの「軸足」
 @団体自治と住民自治を貫く
 A均衡の原則…これまでの自民の政権はAに軸足を置いてきた。
  民主政権は@の原則へ。統一性・公平性から「多様性」へ。
  公共だって民間と同じに多様であっていい。
  都市と農村とで介護のあり方が違っていていい。
○政治エリート4万人にかかる経費は5000億円。うち4000億円が地方議員。
  150兆円のうち50兆が都道府県、50兆が市町村、50兆が国
○カナダと日本のみ、議員の活動量が多い。しかし質が低い。自己決定、自己責任、自己負担が
 ない、という意味において。
○北欧型国家に学ぶ。
 外形上のみ、国が関わる。国が一定のガイドラインのみ定める。
 葬式まんじゅうと温泉まんじゅうの対比。
 葬式まんじゅう…外側が厚い…中味の地方議会は発揮できない
 温泉まんじゅう…外の国の関与は薄い…地方議会が自由に政策を立案
 これにより、@問題処理早くA市民参画が可能にB市民によるコントロールが可能に
○これからの議会は首長と良い緊張関係に。どちらが民意を反映しているかの競争を。
 議会と理事者が質問、答弁するのでなく、市長の提案を議会が議会で審議する形を。
 議会にも法制局を。
 

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3.講演 “わが国の地域主権改革” 〜そのシナリオと課題〜 衆議院議員 逢坂誠二

○自治の問題は地方の問題ではない。国会の問題だ。
○「地方がうまくやれれば国家もうまくやれる可能性高くなる」トクビル(1806生)
 「自治をしっかりさせないと国は良くならない」石橋湛山
 →「自治のない民主主義はあり得ない」「マクロが良くても自治が悪ければ国民は不幸」
○民主党の地域主権4原則
 @自治のことは自治が決められる
 A補完性の原則。near is better =市民に近いところから。監視の目、効率的
 B広域と基礎自治体 基礎自治体を重視、力点は市町村
 C権限財源は責任のあるところに戻していく
○“地域主権”という言葉は学問的にはおかしい。
 「主権」とは独立、自立性、最高性、決定権などを伴うから。地域に主権はおかしい。
 ここで地域主権とは、国民主権を実現することを意味する。
○従来の「地方分権」とは、「国の都合で分け与える」、かゆいところに手が届かないもの。
 トリクルダウンセオリ。「おこぼれ頂戴」の考え方から、地方が国に要求を、さらに「奪い取る」
○今後の民主政権での地域主権政策スケジュールを解説。
 ・地域主権戦略会議へ一本化  ・地域主権戦略大綱制定へ
 ・義務付け枠付けは規制緩和とは異なる。緩和するのでなく「地方に判断を任せる」
  だから緩和するか、そのまま、厳しくなるか、地方が判断するということ。
 ・一括交付金  画一ルールの押しつけ。要らない部屋、実態に合わない。
  霞ヶ関にとっては革命だ。霞ヶ関の存在意義が半減する。
 ・現金給付は国、サービス給付は地方、を基準に。省庁縦割りから省庁横断へ。
 ・直轄事業負担金の廃止 「ぼったくりバー」と橋下知事。
 ・地方自治法抜本改正、地方自治基本法へ。
  国が地方を規制する自治法からの脱却
  議会のあり方、二元代表制の中でも一元制、監査制度、自治体間の連携柔軟化、例えば
  税務課を複数の市で連合設置できるなど、を盛り込む。
 ・出先機関改革
 ・国・地方協議の場の法制化 地方から国への要求要望の場では意味がなく、国の言い訳の場、
  納得させる場でも意味がない。
 ・みどりの分権改革 地域づくり国づくりの価値の転換、地域にある人、モノ、カネ存分に活かす。
  例えば小さな発電施設、伝送路スマートグリッドなど、発電分散化。
○日本の民主主義を進化させたい


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4.講演 “日本政治の課題と展望” 〜何が問われているか〜 東京大学教授 御厨 貴

○鳩山政権、「支持率21%」でも「やめろ」の声はあがらない。「代わるもの」がない。
 自民に戻せ、の声もない。
 「決める」ということがわかっていない。「ブレている」ことだけは明らか。
 「止(と)めたまま」「止(や)めたまま」、作るということをしない政権。
 自民崩壊…次の政権はこれを反面教師としてうまくやるだろう、と国民は思ったが、そうではなかった。
○明治維新、廃藩置県、占領改革。どれもすぐにできたわけではない。4年がかかった。
 明治14年、廃藩置県。「これ以上ぐずぐずしていたら倒れる」というところで西郷、大久保、木戸の三傑が
 廃藩置県を断行。政権が確立した。薩長の軍事力を背景に、さまざまに揺れながらも持ちこたえた。
○2013年、衆院任期満了、参院選挙もある。ここが結着点。
○結党10年、民主党。熾烈な権力闘争をやったことがない。ケンカの仕方、決断の仕方を知らない。
○国家戦略、行政刷新の2枚看板だが、走る前に息切れ。
○自民はうまくごまかしたが民主鳩山はウソをウソのように言う。それが「透明化」だと思っている。
 言葉は限りなく軽く、メリハリはない。
○「戦後」をめぐる自民史。
 鳩山は普天間を言うが、「では国内のどこに?」が問われるのに、問わないまま。東大駒場の学生は
 安全保障を膚で感じていない。「米が守ってくれるのが当り前」となっているのが問題。
 昭和30年の経済白書に「もはや戦後ではない」。これは復興が終わり、戦前に追いついた、との意味。
 佐藤総理は沖縄復帰で戦後を終らせようとした。
 中曽根は「戦後政治の総決算」を。憲法改正をしたかったが、結局イデオロギーに触れられず。
 89年、自民大敗でもうイデオロギーを口にできなくなった。
 小泉登場、吉田・佐藤・中曽根よりも長期政権。靖国にこだわり、「戦後政治からの脱却」にこだわった。
 安部、麻生の時代となり、もう自民の戦後政治へのこだわりはなし。
 そして民主政権へ。戦後へのこだわりまったくなし。
 本当はいまこそプロの政治家の出るべきとき。なぜ「ヤワラちゃん」?
 「政治の劣化」

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5.第2.分科会@ 三重県議会議長 三谷 哲央

○会議の公開
 役員改選協議を公開…早く済む。
 正副議長立候補制、議長は2年なので今年は改選なし。昨日、副議長を選出した。
 5人が所信表明した。
 議運も公開。乳母車を押した赤ちゃん連れの母が聴きに来ていた。
 録画録音OK。邪魔さえしなければ氏名の記入も不要。
 委員会での資料は事前にネットで公表。入手も可能に。
 会議はテレビとネットで、ナマと録画の両方で流している。
○会期を年2回制に
 @4〜6/30 A9月中旬〜12月  年230日 会期日数を増やしてやりやすくなった。
 公聴会が開けるようになった。そのことで予算修正にもつなげた。県立病院改革にも反映。
 委員会開催は従来の2〜2.5倍に。
 参考人招致も可能。年30〜40人を招致。いまや常識に。
 請願者本人、利害関係者、専門家などを招致。
○議会基本条例の制定
 附属機関の設置を明文化
 自治法には、行政のみ設置を明文化してある。議会についてはしてはならないとも書いていない。
 ダメと書かれてないことはしてもよいこと。
 議会改革諮問会議(大学教授など) 1回目の中間答申あり。
 県民、議員、県職員、NPO、大学にもアンケート調査を実施してくれた。結果、議会が改革をしている
 ことを知っている県民が過半数に。
 議会基本条例を作ったことを知っている県民は1/4。
 調査機関の設置…企画中の博物館の中味などを調査する機関
 検討会…「作りっぱなし」条例にならないよう、機能しているのか、効率・効果を検証する検討会。
 政策討論会議…議会としての政策提言。例えば博物館を作るなら、「議会ならこのようなものを」と。
 他府県との連携…
 年1回開催。8/2には橋下知事に来てもらうことにしている。議員のまま副知事になることの是非、
 議会内閣制についても討論することにしている。
 市町村との連携…要望陳情大会になりがちだが。
 議会サポーター…有能な人を事務局に入れる。京大の院生を入れ、レポートを出してもらった。
 議会事務局の「カネとヒト」の制度に風穴を開けられれば、とのねらい。
 立法府としての事務局強化のため、衆参法制局で1年、勉強させている。

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6.第2.分科会A 全国市議会議長会法制参事/明治大学大学院講師 廣瀬 和彦

○地方自治法はS22.34制定時のまま。前例、慣例に縛られる傾向。
 住民から離れ、見えない傾向にある。それを埋めるツールとしての議会基本条例。
○22年4月、104議会が制定。制定ラッシュ。でも作ったから効果があるわけではない。
 作ることは目的でなく手段だ。
○取手市議会は制定していないが、議会改革を進めている好例だ。基本条例でなく会議規則に明記。
 それで動かしながら、議会基本条例が必要か、考えている。
○反問権
 自治法上の根拠はない。長野市議会は明文にしようとして、やめた。
 反問権の必要な4つの場合
 @政策提言がされたときに「予算はどうするのですか?」
 A条例可決されたが予算が否決された場合「議会はどう考えるのですか?」
 B長の市政方針
 C分かりづらい質問を聞きなおすとき
 反問権の効果…無責任な発言を抑止する、しっかり勉強した質問、秩序ある質問になる。
 反問権のマイナス面…長と議会が対立し、感情的になった場合に長が「逆用」
 「問い直す」だけの反問権ならば意味がない。
○議会報告会
 「議会だより」で広報。プラス、報告会で「公聴」。
 足立区や別府市長「お出かけふれあいトーク」「市長と語る会」をやっている。ならば議会もぜひ。
 議会報告会は議員の支持者に対する個人報告とは異なる客観性高いもの。
 伊勢市議会では4〜5人で6班編成。35箇所で開設。担当先は抽選で決定。平等に。
 どれだけ細分化するかが課題。
 公務なのか公務でないのかが不明確…議員派遣手続きをしていれば「公務」扱いに。
○決算審議の活用
 決算は「終ったこと」だから力を入れない、入れづらい実情だった。
 H18、「決算常任委員会」を立ち上げ、決算の活用に力を入れる。予算の効果を検証し、次に反映
 させるための決算審議とする。
 多摩市議会の例:数値化、採点方式、レーダーチャットで可視化、3段階評価
 決算に事業仕分け手法、京都府議会…
 議会主導で27事業を仕分け。3班編成、各9事業を担当。説明→質疑→多数決
○定数
 自治法90、91条の法定上限は撤廃へ。「下は3人から上は何人でも」とすべき。
 全国自治体の82%は上限より下回らせている。平均18%も下回らせている。
 3つの理論 @会議体としての能率 Aすぐれた人材確保 B行政との均衡
 定数に関するその他の見解
 @財政面で、議会費は全体の0.7%…行政が減らしたから議会も減らせ、というのは当たらない。
 A人数減れば監視機能が落ちるということを市民に説明すること。
 B市民の意見集約には、ある程度の議員は必要だ。

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7.全体会@ 分科会統括

○第一分科会統括「地域づくり」
 馬路村の報告より。「単なるゆずドリンクから『馬路村を売る』ドリンクへ」
 交流人口の拡大 @観光 A村を応援、買ってくれる人 B特別村民 世界に4000人。Iターン、
 Uターンも人口1000人に88人。
 失敗談。京王百貨店で全国駅弁大会。馬路村に鉄道はないが昔のリンドウ鉄道にちなむ「田舎ずし」
 600個を準備したが、200個しか売れなかった…自己満足から顧客満足へ奮起。
 村は「絶滅危惧種」
 地域自治区は、NPOによるものがうまくいっている。
 馬路村の「3つのポイント」@地域資源を見極めるAそれに付加価値をB市場性の見極め
 この3ポイントは、地域づくりで言われる経済活動のポイントに酷似(資料)。
○第三分科会統括「政策づくり」
 事業仕分けの先に何があるのか? 国と地方の役割分担明確化が課題。
 国の事業仕分けでは場当たり的に、要らないものからパッチワーク的に削る。深い議論なし。
 そもそも「関与」の必要がないものは地方へ。省庁重複の改善。
 結果は重要だが判断基準はもっと重要。
 事例:横浜市泉区「住民の声を聴く作業の役割分担」
 地区経営委員会、区の地域協議会…議員が顧問になることで議員も協力する立場に。

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8.全体会A パネルディスカッション“日本を変える、自治体を変える〜地方からの挑戦〜”

○星
 自民党は昭和30年生まれ。ずっと第一党だった。結党初の去年夏の選挙。
 以来8ヶ月。民主は支持率80から20へ。官僚、業界、自民の一部への配慮から、スケール小さく。
 霞ヶ関には二つの考え方がある。
 @地方は疲弊している…自治省、総務省
 A地方は疲弊していない…名古屋では市議が1600万円もらっているじゃないか。
 どこが苦しく、どこが元気なのかを整理しコンセンサス作る必要があるのではないか。
 @地方は能力がある、やっていける A地方に任せたら大変だ、汚職天国になるかも
 この議論でも、どういうところが能力があり、どこが欠けているのかのガイドラインを深める必要がある。
 メディア、特に新聞は中央集権的と言われる。地方で働き、本社に「上がってくる」という言い方。
 地方では遊んでいて体力をつける、と言われる。メディアも分権し、地方中心の紙面とすべきだ。
 テレビでは大阪vs東京の縄張り争いあり。「キー局発」の番組が8割。2割がローカル。
 情報分野の分権が考えられなければならない。

○穂坂
 @地方から国を変える…病院に3ヶ月入院すれば退院するときにはもう立って歩けない。そのように、
  戦後65年、地方が歩けないほどに、国がリードしてきた。今は歩けない。が、歩かせるしかない。
 A2015から2025年にかけて、団塊の世代が後期高齢者に。その時には消費税を5%や10%上げても
  とてもダメ。ワースト1は埼玉県。神奈川、千葉なども高齢化が到来すれば耐えられない。
  本番はこれからだ。都市の危機が忍び寄っている。
 B民間解放。地方は疲弊している。このままでは、地方で生き残るのは役所だけ。
  自治体そのものを民間へ。議会が地方再生を。

○金井
 「政権交代可能な二大政党制を作る」といって15年がかりで実現した。
 それで、国民が幸せになるのか?それはわからない。
 しかし「ダメ」の烙印を押されたのが09年の選挙であった。もう誰も、この国を「運転」できない。
 あたかも巨大ダンプカーであり、普通免許では運転不可。
 誰に代わっても、運転はできない。英国のしくみは「運転手を代える」ということ。
 それがダメだということがわかった。だから「このクルマではダメなのだ」。この車をリコール。
 運転可能なものにしなければならない。
 各人がバイクに乗り換えよう、自治体、首長、議会が担うものに。
 奇しくも英国でシステムは崩壊。世界の潮流ではないか。
 国は、一刻も早く解体すべき。
 難しいのは、そして矛盾しているのは、「運転できない人が解体の任を負う」こと。
 改革のアイデアがとても重要だ。
 「運転できるサイズの車に作り変えることだ」
 ところが、国が分権を進めるべきなのに、その能力が国にない。
 そこで、地域主権。地方から、しっかりアイデアを出すときだ。
 それに呼応し、国は地域主権だけはしっかりやれ。

○永久
 カナダ1960年代「プログラムレビュー」を紹介。支出削減の手法。
 @公共利益にかなっているか A政府がやるべきものか B連邦か州政府か基礎自治体がやる
 べきものか C民間に任せられる部分が少しでもあるか Dガバナンス いかにスリム化効率化
 するか Eカネがない今、やはりやるべきか
 事業仕分けについて、要るか要らないか議論するが、そもそも要るからこそ始めたはずだ。
 仕分けには限度がある。
 カナダでも、連邦が14%スリム化、仕事は州政府へ。全3000事業のうち449事業、6000億程度。
 事業仕分けについて
 @目的目標がはっきりせず測定できないもの。つまり利益誘導のもの→やめよう。
 A成果検証がとても困難なもの。外交、文化など→これが困る。
 B重複する事業。地方もやっていること。文科省に多い。放課後こども教室、産学官支援、イノベーション
  支援など。→地方へ。コントロールしたい中央集権の弊害だ。
 C中間搾取がある事業。法人が間接手数料を取っている。科学みらい館。毛利さんとのコラボ。
  →天下りが背景にある。公務員制度改革を。
 D複数省庁。国立病院、労災病院の統合なかなか進まず。縦割りの弊害だ。
 事業仕分けはやりっぱなしではない。「これをやれば削減できる」と言っている。
 利益誘導をなくす、分権改革をやる、公務員改革をやる、省庁改革をやる。そうすればスリム化は可能。

テーマ「どうして分権は進まないのか」

○星
 @自民半世紀の中央集権成功体験。それを支えた官僚、族議員が今も。崩壊したのに枠組みは
  崩れないまま。
 A地方の側。「それほど困ってない」しかし次第に疲弊し、崩れてきた。
 B国民の意識。「なんとなく」「国のほうが安心」とのムード。しかしこれも怪しくなってきた。
 今まで、分権を阻んできたものが3つとも崩れてきている。

○穂坂
 @人間の権力へのエゴ
 A地方の弱さ
 ・国は国民へのわかりやすいメッセージ全く出してない。強いメッセージを示せ。
  「地方分権推進委員会」では国民には弱い。
 ・公開でやろうとしない。公開でやれ。
 ・現場を知らない人がやっている。国会議員と知事でやっている。実務的にやれ。
 ・部分でやる。全体でやらない。病院たらい回し→権限が錯綜→国、県の誰が責任者かわからない。

○金井
 もし、自民が復権したら、(先ほどの例で)運転できないことを悟り、小さな車にするだろうか?
 ところが政治家というのは「自分にはできない」とは思わない。「できない」と悟ったときにはリタイア。
 自分には運転できないと悟り、その上で、ダウンサイジングに取り組む政治家こそ必要だ。

○永久
 分権が進まないことが危機感を感じるほどになっていない。
 「ブッ飛んだ政治家、首長」が出ると壁にぶつかる。壁に向かい、戦うことだ。
 好きなように、いろいろなことをやる人が出てくることだ。ニセコで活躍したオーストラリア人ラフティング。
 おかげでニセコは一時、小バブルに。
 宝探しだ。すると法規制の壁がある。それを崩そうと戦う人が出るべきだ。

Q&A 会場とのやりとり

○分権は、国に任せてもダメなことは明らかだ。
 地方議員が、「地方分権すれば良くなる」と語れるかだ。
 本社、支店、出張所の間のことなんか、消費者は興味がない。
 サービスが良くなる、安くなる、と明示できなければ、国民は関心ない。
 有権者に地方分権を「売る」こと、有権者を味方につけること。
 地方分権を進めると「増税なくしてハッピーに」と、訴える議員になろう。

○星
 友人の議員が言っていた。「本当は病院改革をやりたいけれど、それをやると膨大な手間がかかる。
 それよりも口利き、病院におばあちゃんを入れてあげることで支持者を広げる」と。それでいいのか?
 数百票得票の議員では、できないのではないか?
 定数削減の「ご利益」、医療費無償化など、市民に「ご利益」を示すことだ。

○穂坂
 制度改革こそ大事だ。議会改革を、今日集っている議員から始める。動かない議員も多いが、今日、
 集っているような議員ばかりなら改革はできる。一人からでも訴え続けよう。ムダではない。
 あきらめない。
 「議会は最高責任者」との看板を背負う。議員の封筒に一行キャッチコピーからでも訴えよう。

○金井
 議員は、いつでも「市長になる」ことを目指し続けることだ。「自分が市長をやる」。
 市長を目指さない議員は議員をやめるべきではないか?
 権力闘争、勉強、競争の世界だ。
 市長にはなれないと諦めた議員が全国38000人。これ、要らない。
 地域自治区区長を公選制にしているケースもある。議員を鍛えることだ。
 市長が務まる人が議員をすべきだ。

○永久
 マニフェストにストーリーを。
 「こうすればこうなる」と、市民に夢を。
 例として宮古市のクマサカ氏。病院を作るために地域経済活性化を。そのために産業振興を。そのために
 掘り起こしを…このようなストーリーを市民に示せ。

○まとめ
 役所は、行政の分権化ばかりを言っている。行政の権力の分権化を。
 そうでなく「立法府の分権化」を。
 自民から民主へ、でなく国会から地方議会への「政権交代」を!
 本来、市長は議会の「下請け」だ。その逆ではない。
 「条例優先社会」「国から地方へ、政権交代」を。

この学会を「議員が勉強する機会」として育てていこう。
地方から、良き「反乱」を!

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9.感想

 これを書いているのは9月末。この会に参加した5月から数ヶ月が経ちました。
 その間、7月には参院選が行われ、民主が敗北したがさりとて自民が支持を得たわけではない、
まさしく前述のパネルディスカッションで語られていたことそのままに、「もはやこの国を運転する人は
いない」ということを悟らされる結果となったのではないでしょうか。
 円高、さらに尖閣諸島の問題と、菅続投政権はもみくちゃにされていますが、地方のやるべきことを
地方に任せる手はずを整えておけば、円高も、尖閣問題もまさしく地方ではどうこうできないのですから、
それに専念できるというものではないでしょうか。
 そしてディスカッションの中にもあったとおり、まさにまさしく、「自分にはできない」と思えない政治家が
政権を担う。だから地方に手放さない。手放す勇気や知恵がない。それがいまの日本のありのままの
姿なのだと思います。
 2日間に及んだ会合を終え、会場の建物を後にするとき、胸が高鳴っていたように思います。
 「国から地方への政権交代」。
 その実現のために壁は3つ。国の壁、地方議会自身の自覚の壁、そして国民感覚、住民の地方議員
への感覚の壁。ただ、はっきりしているのは、「私が声を上げなければ何も前に進まない」ということだけ
です。
 公明党に属する一員として、党中央に、このことを訴えてまいります。
 丸亀市議会議員として、議会内とそして行政に、何度も働きかけてまいります。
 そしてこうやって公費を遣い、勉強させてもらった市民の一人として、このレポートで終わりとせず、あら
ゆる機会に、「地方への政権交代」を、語ってまいります。

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